雑記帳
横溝正史の岡田村疎開

2019年11月18日

 倉敷市真備町に行って、横溝正史疎開宅真備ふるさと歴史館などを訪れ、推理作家・横溝正史の疎開時代のことや爆発的ヒットとなった「金田一耕助シリーズ」誕生の背景を想像したりしました。

横溝正史の像
横溝正史の像

 「本陣殺人事件」「獄門島」「八つ墓村」「犬神家の一族」などの推理小説で知られる横溝正史は、太平洋戦争末期の1945年(昭和20年)4月から3年余り、東京での戦火を避けて岡山県吉備郡岡田村(現在の倉敷市真備町岡田)に一家で疎開していました。

 戦時中は探偵小説の発表が制限され、「人形佐七捕物帳」などの時代劇を執筆していたものの、終戦後に推理小説が自由に発表できるようになると、本格推理小説を続々と発表するようになったといいます。

 それらの推理小説の多くは、岡田村に疎開していたときに村の人々から聞いた話などをヒントにしたもので、名探偵・金田一耕助も岡田村に疎開していたときに誕生しています。

 角川文庫の横溝作品は1979年には4,000万部を突破し、映画化・テレビドラマ化された作品は現在でも繰り返し放送されています。
それらのヒット作品の多くが「金田一耕助シリーズ」のものであることから、偉大な推理作家・横溝正史の原点は岡田村疎開時代にあるのではないかと思いました。

 

 横溝正史疎開宅

横溝正史疎開宅(門前)
横溝正史疎開宅(門前)
横溝正史疎開宅(門のところ)
横溝正史疎開宅(門のところ)

 村の人々は横溝一家を「東京できょうてえ目にあった疎開者じゃいうけんのう」と厚い温情で迎え、何の仕事もなくどうやって食べて行けばよいのか不安だった横溝を米や野菜などを持ってきて助けてくれたそうです。

横溝正史疎開宅(門を入ったところ)
横溝正史疎開宅(門を入ったところ)
横溝正史疎開宅(庭に面した縁側付近)
横溝正史疎開宅(庭に面した縁側付近)

 一家の生活が安定する頃になると、村の人々が「せんせぇおるけぇ」と夜な夜な遊びに来て、横溝に村や近在の昔ばなしを語って聞かせたそうです。横溝はそれらの話をヒントにして「本陣殺人事件」を書き、第一回推理作家クラブ賞を受賞、さらに「獄門島」「八っ墓村」など、彼の代表作となる作品を書きすすめたといいます。

横溝正史疎開宅(玄関)
横溝正史疎開宅(玄関)
横溝正史疎開宅(表札)
横溝正史疎開宅(表札)

 玄関に横溝正史金田一耕助のふたつの表札がかけられていました。横溝の日記によると、金田一耕助は、昭和21年4月24日にこの家で生まれたことになるのだそうです。この家の庭に面した6畳の和室(横溝が執筆に使っていた部屋)で誕生したということなのでしょうか。

横溝正史疎開宅(座敷)
横溝正史疎開宅(座敷)
横溝正史疎開宅(庭)
横溝正史疎開宅(庭)

 人と接することが不得意だった横溝にとって、気さくに方言で話してくる村人たちとの交流は楽しく、後に「岡田村疎開時代が生涯で最も幸せだった」と述懐しているくらい、この地での生活は充実したものだったようです。そして、村人たちの話には、中国山地や瀬戸内海にまつわる伝説だけでなく地元の「言い伝え」や「うわさ話」でさえ耳を傾け、多くの推理小説の構想を練ったと言われています。


<横溝正史疎開宅>
所在地:倉敷市真備町岡田1546
休館日:月・木・金、12/29~1/3
入館料:無料
駐車場:2台程度
電話番号:086-698-8558

横溝正史疎開宅では、地元の方が交代で観光客への対応などに当たっておられるようでした。

丁寧に対応していただき、「塀・縁側・軒の部分などは改修しているけれど庭は当時のままだ」とか「先生が執筆に使っておられた部屋は、こちら側の部屋だ」とか詳しいお話をお伺いすることもできました。

 散策ルート・作品関連の場所など

千光寺
千光寺
濃茶のばあさんの祠
濃茶のばあさんの祠

 千光寺は「獄門島」に登場する「千光寺」の名前になった寺院(曹洞宗)で、濃茶のばあさんの祠は、土地の人がまつっているご神体の祠で、横溝が「八つ墓村」に濃茶の尼を登場させるヒントになったのだそうです。

大池(弁天島付近)
大池(弁天島付近)
大池付近(東側の遊歩道)
大池付近(東側の遊歩道)

 大池は周囲1kmほどのため池で、このあたりは横溝の特にお気に入りの散歩コースだったようです。短編の「空蝉処女」にずばりこの大池が登場しているし、「本陣殺人事件」に出てくる小さな池もこの池ではないかと考えられています。

キャラクター像(おりん)
キャラクター像(おりん)
キャラクター像(金田一耕助)
キャラクター像(金田一耕助)

 真備町のウォーキングコース「金田一耕助の小径」には、横溝作品に登場するキャラクター像が6体設置されています。
おりんは「悪魔の手毬唄」に登場する老婆で、鬼首村で金田一耕助とすれちがうシーンの像が大池の北側に設置されています。金田一耕助の像は真備ふるさと歴史館のところにありました。

 真備ふるさと歴史館

真備ふるさと歴史館(外観)
真備ふるさと歴史館(外観)
横溝正史の展示コーナー
横溝正史の展示コーナー

 真備ふるさと歴史館には、横溝正史関連の展示物が色々ありました。

横溝正史の書斎を再現したもの
横溝正史の書斎を再現したもの
横溝正史の作品(一部)
横溝正史の作品(一部)

 展示してある書斎の畳や障子などは再現したものですが、机は、ご遺族から寄贈された横溝正史愛用の机だそうです。この机を見られただけでも感激ですが、さらに長男・亮一氏の「父・横溝正史と真備町」と題する寄稿文も展示されていて、それがまた心に沁みて素敵でした。


<真備ふるさと歴史館>
所在地:倉敷市真備町岡田610
休館日:月・木・金、12/28~1/4
入館料:無料
駐車場:大型バス3台、普通車20台
電話番号:086-698-8433

横溝正史の展示関連のことなどを職員の方が丁寧に説明してくださいました。そして、岡田村疎開生活時代に発表された作品には「本陣殺人事件」「蝶々殺人事件」「獄門島」など著名な作品以外に実に多くの作品があることを知り、驚きました。

ここには広い駐車場(傍にトイレもある)があり、今回はここに駐車して、他の場所を歩いて巡りました。